analyticstracking 国立研究開発法人 量子科学技術研究開発機構 高崎量子応用研究所
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原子力&放射線に関する用語解説

 

{見出しのリンク}

RI中性子源IBICアブレーションアラニン線量計
ESR (電子スピン共鳴)ECRイオン源イエローケーキイオン照射効果イオン注入(装置)一次ブラッグ反射イットリウム遺伝子座移動度イメージングプレートインテリジェント材料
宇宙環境ウラン
エキシマレーザーSTIMS-パラメータNRAMCPM2世代植物LETエレクトロルミネセンス素子
オイルパーム廃棄物オージェ電子分光法オンラインアイソトープ分離器
化学気相法架橋核変換反応ガス流速カロリメーターγ線スペクトロメトリ
キャリアの捕獲吸収線量金属表面ダイポール
グラフト重合グレイ
欠陥結晶ポテンシャル
高温イオン注入高周波加速
サイクロトロンサポートガス三酢酸セルロース線量計
G値時間分解X線吸収分光しきいLETと飽和反転断面積質量衝突阻止能照射線量焼成除去修復シングルイベント効果シングルエンド加速器
ストロンチウム
制限酵素線エネルギー付与前駆体法線形加速器線量
耐放射線性炭化ケイ素単結晶タンデム加速器
チタンチャネリング中空糸中空糸モジュール中性子過剰核、中性子欠損核
DNAライブラリーデバイ温度転位線、転位ループ及び転位網電気的活性化電界効果トランジスタ
等時性磁場トータルドーズ効果トランスポゾントリプルビーム照射
粘弾性
橋かけバナジウム半導体メモリー反粒子
比放射能
ファラデーカップフーリエ変換赤外反射吸収法複合材料不確かさ不融化プラズマ対向機器(壁材料)フレンケル欠陥分子動力学手法を用いたQMDコード
ベクレル変異頻度
放射線抵抗性菌ホウ素ホール係数ポジトロン
マイクロビームマンガン
ミュオン触媒核融合反応
モノマーモリブテン
陽電子寿命測定陽電子消滅法陽電子ビームの静電輸送陽電子の全反射陽電子ビームのパルス化
ラザフォード後方散乱分析ラジカルRALS (遠隔操作式後充填法治療装置)
リチウムリネンリヒテンベルク図形


【あ】

RI中性子源 (RI neutron source)

原子炉や加速器によらずに、ラジオアイソトープ(RI)を利用した中性子発生源をいう。RI中性源は小型で取り扱いが簡便であり、また中性子強度も安定しているなどの利点があるが、強度は小さい。中性子発生機構から見ると、(α、n)や(γ、n)反応によるものと自発核分裂によるものとがある。前者の例として241Am-Be中性子源や124Sb-Be中性子源などがある。後者の例として252Cf中性子源があり、水分計、石油検層、中性子ラジオグラフィなどに利用されている。

IBIC(Ion Beam Induced Charge/Current)

イオンビーム誘起電流。バイアス電圧が印加された半導体素子にイオンビームを照射することにより、その電離作用により生成した電荷が電極収集されて発生する電流。微小な構造を持つ素子にマイクロビームを走査してその電流分布を測定することにより、素子の二次元的な構造解析が行える。

アブレーション (ablation)

一般に固定基板にレーザーをパルス的に照射すると、レーザーの高密度エネルギーによって基板表面から中性原子や正/負に帯電したイオン等が噴出する。この時の粒子の噴出方向は、基板に垂直な方向が優勢である。この様な粒子の噴出現象をアブレーションといい、噴出粒子の一団をアブレーションプルームと呼んでいる。

アラニン線量計 (alanine dosimeter)

アミノ酸の一種であるアラニンを主成分としたペレット、フィルム等の形状の固形素子であり、放射線照射により、その吸収線量に比例して生じるラジカルの相対濃度を電子スピン共鳴(ESR)を用いて測定する方法に基づく線量計。線量測定範囲が1~105Gyと広く、また、高い精度と安定性を持つため、取り扱いやすい基準線量計としてだけでなく、線量標準への遡及性の確認、研究期間や使用施設間で素子を郵送・運搬することによる線量保証・線量相互比較等にも広く用いられている。

【い】

ESR (電子スピン共鳴) (Electron Spin Resonance)

不対電子をもつ物質は、磁場の中にある時電波を吸収する。この磁場の強さと電波の周波数の間には一定の関係があり、ふつう、数千ガウスの磁場とマイクロウェーブ帯の電波の組み合わせが使われる。この電波の吸収の大きさ及び吸収スペクトルは、それぞれ不対電子の数及びその周囲の構造に依存する。放射線を照射した場合に生じる材料中のラジカル及び欠陥の定性及び定量分析に使われている。

ECRイオン源 (ECR ion source)

井戸型静磁場内にマイクロ波を入力すると、磁場の強さとマイクロ波の周波数の、ある条件で電子のみがサイクロトロン共鳴(Electron Cyclotron Resonance)を生じ、プラズマ中の電子を加熱することができる。これにより磁場中に閉じ込めた原子又は分子を電離し、C6+、Ar13+、Xe23+のような多価重イオンを得ることができる。この原理を利用したイオン源の使用により、従来むずかしかった重イオンをサイクロトロンで加速することが可能となった。

イエローケーキ (yellow cake)

ウラン鉱石からウランを分離・抽出する際、粗精錬によってその含有率を高めた中間製品。黄色の物質で、ウラン精鉱ともいう。

イオン照射効果 (ion irradiation effect)

有機高分子材料にイオンを照射すると、イオンは電子線やγ線に比べ大きな質量や電荷を持っているので、イオンの飛跡に沿って大きな損傷を与えるとされている。これに対して、電子線やγ線は試料全体に均一な損傷を与える。

イオン注入(装置)(ion implantation, ion implanter)

元素をイオン化して加速し、固体表面に衝撃することにより固体内部に元素を導入する方法をいう。半導体への不純物導入を目的としたイオン注入は1970年代からすでに実用化されているが、最近ではこの方法を金属、セラミックス、高分子などに応用して新しい表面機能をもった材料を創製しようとする研究開発が活発に進められている。イオン注入装置は主に、イオン源、質量分析部、加速部及び照射部から構成される。イオンの加速エネルギーとしては、現在、数十keVから数百keVがよく用いられているが、より低いエネルギー及び高エネルギーのイオンの注入は今後の研究課題である。

一次ブラッグ反射 (primary Bragg reflection)

一般に、電子線やX線の回折条件は、運動学的な考察に基くブラッグの式から与えられ る。入射波と反射波との間に起こる位相差が360度(2pi)の整数倍(n=1,2,3, 4・・・)のときに反射波の強度が高くなります。一次ブラッグ反射とは、n=1の条件 の反射条件を満たした回折をいう。

イットリウム (yttrium)

希土類に属する遷移元素の一。元素記号Y原子番号三九。原子量八八・九一。灰色の金属。延性・展性が少なく、酸化されやすい。レーザー発振材料の微量成分に用いる。また、放射性同位体は放射線源・トレーサーとして用いる。
遺伝子座 (gene locus)
遺伝子が染色体上で占める位置。
移動度 (mobility)
熱平衡状態では、キャリア(電子、正孔)は熱運動によって乱雑なブラウン運動を行うために、運動は全体として打ち消し合い、平均速度はゼロとなる。この状態に電場を加えると、キャリアは運動量の変化を受け、電場に比例した平均速度を持つ。この比例係数を移動度と呼ぶ。移動度は、単位電場が印加されたときの電子の平均速度を意味する。

イメージングプレート (imaging plate)

輝尽性発光体という特殊な蛍光体をプラスチックフィルム上に塗布したもので、X線、電子線などの放射線を高感度で検知し、2次元の画像が得られる。輝尽性発光体に放射線を照射した後、レーザーを照射すると放射線照射を受けた部分が発光する。この光を光電子増倍管で電流に変換し、画像化する。透過力の大きい中性子も、熱中性子を効率よく吸収して電子を放出するガドリニウムなどを輝尽性発光体に混ぜることによって検出できる。
インテリジェント材料 (intelligent materials)
生物は、環境の変化に柔軟に対応して、自己の構造の一部を変化させたり修復したりすることができる。また、自己を増殖させることにより生き残り、進化する。生物に見られる「環境条件に対応し知的に応答し、機能を発現する能力」をもった材料のことを、インテリジェント材料と呼び、21世紀に来るべき材料として、開発が進められている。具体的には、寿命を予測し劣化の抑制や修復のできる構造材料、流れる電流を最適値に維持できる材料、最適光量に制御できる発光材料、成長に応じて自己分解する医用材料なとが考えられている。

【う】

宇宙環境 (space environment)

宇宙から大気圏への帰還する際、大気との摩擦により宇宙船の表面は最大で1500℃を越える酸化雰囲気に曝されることになる。従ってより耐酸化性に優れた耐熱材料が求められている。ロケットエンジンなどでは、セラミック複合材のノズルやタービンを用いることで高温度でも優れた耐酸化性と強度を特徴とする部品の研究開発が進められている。
ウラン (Uran)
アクチノイド元素の一。元素記号U原子番号九二。原子量二三八・◯。天然にはピッチブレンド・カルノー石などの鉱物に含まれる。その同位体組成はウラン二三八が九九・三パーセント、ウラン二三五が◯・七パーセントのほか、ウラン二三四が微量に存在し、いずれも半減期の長いα崩壊をする。ウラン二三五と二三三(人工放射性核種の一)は連鎖的核分裂反応をするので核燃料となる。ウラン二三八も中性子を捕獲して核燃料のプルトニウム二三九となる。光沢のある白色固体の金属で、化学反応性が高く、粉末にすれば空気中で自然発火する。ウラニウム。

【え】

エキシマレーザー (excimer laser)

希ガスとハロゲンの混合気体を放電励起することにより生成するエキシマ(励起状態の原子と基底状態の電子が結合してできる励起分子)が、基底状態に戻る時に発生する光を増幅し、高出力の紫外光(ArF:193nm、XrF:248nm、XeCl:308nmなど)を発振する代表的な気体レーザーである。エキシマレーザーは、1975年頃開発され、現在さらに高性能化が進められており、光化学、表面処理、微細加工、化学プロセスなどの分野で重要性が高まっている。

STIM (Scanning Transmission Ion Microscope)

走査透過イオン顕微鏡。高分解能のイオンマイクロビームを走査し、生物細胞などの薄い試料を透過したイオンのエネルギーを検出してエネルギー損失から試料の密度や厚さの二次元分布を得る。試料を回転して測定を行い高速計算機によるデータ解析を行えば非破壊で三次元構造解析も行える。

S-パラメータ (S-parameter)

陽電子消滅γ線のエネルギースペクトルのシャープさ(sharpness)を表すパラメータ。消滅γ線は、消滅相手の電子の運動量に比例したエネルギー幅を持つので、原子空孔があると運動量の小さい外側の方の軌道の電子と消滅する割合が増え、スペクトルの幅が狭くなってS-パラメータは大きくなる。

NRA (nuclear reaction analysis)

核反応分析。イオンビームと試料中の元素との核反応によって生成する二次放射線を測定する分析法。主に水素をはじめとする原子番号15以下の軽元素の定量分析に用いられる。

MCP(micro channel plate)

マイクロチャネルプレート。薄いガラス性の板に、貫通した無数の細い穴(直径6μm~25μm、長さ0.24~1.0mm)を持つ電子増倍素子。これらの穴はチャネルと呼ばれ、おのおの独立した電子増倍器として動作し、全体として二次元電子増倍器を形成する。電子やイオンに対して高い検出効率を示すと共に、紫外線からX線にかけての波長の光に対しても感度を持つ。

M2世代植物(second generation of mutagenized plant)

照射した種子から生育させた植物体上に稔った種子由来の植物。

LET(linear energy transfer)

線エネルギー付与

エレクトロルミネセンス素子 (electroluminescent element/materials)

電場(直流又は交流)を印加したことにより物質が発光する現象をエレクトロルミネセンスという。エレクトロルミネセンス素子とは、電場の印加により注入した電子及び正孔を有機発光層で再結合させることにより、電気エネルギーを直接、光エネルギーに変換する素子のことをいう。

【お】

オイルパーム廃棄物 (oil palm (cellulosi) waste)

アブラヤシの実から抽出されるパームオイルは、食用油、マーガリン、石鹸、工業原料等へ幅広く利用されている。一方、パームオイルの抽出工程で、空果房(EFB:Empty Fruit Bunch)、果肉繊維(PPF: Palm Press Fiber)、核油粕(Kernel Cake)、廃水(Palm Oil Mill Effluent)スラッジ等、多量の廃棄物が排出される。これらの主要廃棄物のうち、核油粕及び廃水スラッジは、すでに飼料として利用されている。しかし、搾油した後の果肉繊維は、工場のボイラー燃料として用いられているが煙公害の原因になっている。また、果実をふるい落としたあとの空果房は、一部が肥料用の灰(カリ分に富む)を得るために利用されているに過ぎない。PPFやEFBは地球環境保護の観点から注目されている貴重なセルロース系資源でもあり、家畜の飼料への転換などの新しい有効利用法の開発が望まれている。

オージェ電子分光法 (Auger electron spectroscopy: AES)

物質に紫外線、X線あるいは高エネルギーの電子線を照射するとイオン化が起こり、電子が放出される。紫外線あるいはX線照射によって放出される電子のエネルギー分析を行う方法を光電子分光と呼び、このうちX線を光源として用いるものをX線光電子分光という。X線光電子分光の光源にはふつう、Al Kα線やMg Kα線が用いられる。これらX線は物質を構成する原子の内殻電子をイオン化するのに十分なエネルギーをもっているので、価電子と共に内殻電子が放出される。内殻電子のエネルギースペクトルは元素によって異なり、また同じ元素の場合でも結合状態によって変化するので、スペクトルの解析から元素分析と状態分析が可能である。X線あるいは電子線照射により内殻電子が放出されると、同時に高い励起状態の陽イオンが生成する。この陽イオンは瞬間的にX線を放出するか、あるいは2次電子イオンを放出して安定なイオンに変わる。この放出される2次電子をオージェ電子という。オージェ電子分光法は、オージェ電子のエネルギースペクトルを測定することにより、物質の元素分析を行う方法である。

オンラインアイソトープ分離器 (ISOL)

加速器又は原子炉などの核反応を起こし得る施設に直結して設置され、核反応生成物をその質量差によって分離するための装置である。ターゲット物質から反跳した核反応生成物は、直ちにイオン源(例えば表面電離型イオン源など)内でイオン化され、続いて磁場の中を通過する。その際、質量の異なるイオンは磁場による通過軌道の曲げられ方に差があるため分離が可能となる。ISOLによる分離の特徴は、化学的手段では分離し得ない同位体間の分離ができることと、分離が秒単位の短時間で行われることである。したがって、短寿命のアイソトープに関する研究において有用な装置である。

【か】

化学気相法 (chemical vapor deposition method)

化学気相成長法(CVD法:Chemical Vapor Deposition Method)とも呼ばれ、気体原料から化学反応を経て、薄膜などの固体材料を合成するプロセスの総称。CVD法の用途は極めて多様で、炭化ケイ素単結晶の成長ばかりでなく、金属、有機高分子の合成にも使用されている。CVD法の特徴は、高純度ガスが使用できるため、高純度の固体材料が合成できることである。CVD法による炭化ケイ素単結晶の成長が成功してからは、シランガスやプロパンガスなどの高純度原料ガスから良質で高純度な炭化ケイ素単結晶が得られるようになっている。

架橋 (cross-link)

橋かけ

核変換反応 (nuclear transmutation)

原子核同士あるいは原子核と中性子等が衝突し、別の原子核や粒子が生じること。

ガス流速 (gas velosity)

炭化ケイ素(SiC)単結晶の化学気相成長を行うためには、シラン、プロパン、水素を混合したガスを石英製の反応炉内部へ噴射するが、その噴射速度をガス流速という。ガス流速は、1秒間あたりの混合ガスの噴射量Fに比例し、反応炉内部の圧力Pや反応炉の断面積Sに反比例する。ガス噴射量をF(l/min)、反応管断面積をS(cm2)、反応管内圧力をP(Torr)とすれば、ガス流速Vは 、V=(F/S)(760/P)[l/(cm2・min)]と表される。

カロリメーター(calorimeter)

物質中で失われた放射線のエネルギーは最終的に熱になり、吸収した物質の温度は上昇する。この物質の温度変化を利用して放射線の吸収エネルギーすなわち吸収線量を測定する計測器をカロリメーターという。

γ線スペクトロメトリ(gamma-ray spectrometry)

ラジオアイソトープ(RI)が放射性壊変に際して放射するγ線は、そのRIに特有のエネルギーの線スペクトルを持つ。したがって、γ線のエネルギーを測定すれば核種を同定することができ、またそのγ線の強度を測定すればRIの量を知ることができる。実際には、類似のエネルギーのγ線を放射するRIが多数あるので、それらの混合物のスペクトルの解析には、最近ではGe検出器のようなエネルギー分解能の高い検出器と電子計算機の解析プログラムが利用される。放射化分析における放射能測定によく利用される。

【き】

キャリアの捕獲 (carrier capture)

半導体中の伝導電子及び価電子帯中の正孔をキャリア(charge carrier: 電荷担体)という。半導体の分野では、単にキャリアと呼ばれる。このキャリアが結晶中に存在する欠陥等によって捕らえられることをいう。

吸収線量 (absorbed dose)

電離放射線の照射によって物質の単位質量あたりに与えられたエネルギー量。放射線照射利用分野では、単に「線量」という場合が多い。国際単位(SI単位)では物質1kg当たりに吸収されたエネルギーが1ジュール(J)の時、1グレイ(Gy)という。この名称はBragg-Grayの原理で知られているL.U.Grayに由来する。従来はラド(100rad=1Gy)が使用されてきた。

金属表面ダイポール (metal surface dipole)

金属中の自由電子が量子力学的効果により真空外に浸出すことで表面に形成された電気二重層を言う。このため、ダイポールポテンシャルが発生し、電子に対する金属内部のポテンシャルは、一定値低くなる。ジェリウム模型では、電子の仕事関数は、表面ダイポールポテンシャルとフェルミエネルギーの和で表される。

【く】

グラフト重合 (graft polymerization)

グラフトとは、“接ぎ木”という意味で、ある高分子鎖に別の高分子鎖を結合することをグラフト重合という。高分子鎖上に放射線照射や触媒などにより活性点を形成し、これによって別のモノマーの重合を開始してグラフト重合体を合成する。繊維やプラスチックなどの高分子材料に別のモノマーをグラフト重合して、新しい性質をもつ材料を製造することができる。高分子とモノマーの共存下で放射線を照射する方法を同時照射グラフト重合法、あらかじめ放射線を照射した高分子にモノマーを接触させる方法を前照射グラフト重合法という。
グレイ (Gy)
吸収線量の国際単位(SI単位)。吸収線量の項参照。

【け】

欠陥 (defects)
原子が周期的に配列する完全結晶からの秩序の乱れを格子欠陥または結晶欠陥と呼び、点欠陥、転移、面欠陥といった種類がある。点欠陥は本来原子が存在する格子位置に原子が存在しない空孔型と格子の隙間に原子が存在する格子間型があるが、これらは単独で存在するだけでなく複数組み合わされた状態(空孔-格子間原子対、複空孔等)でも存在する。転移は線状の格子欠陥であり、ズレの方向によって刃状転移とらせん転移に分けられる。面欠陥は結晶粒界や双晶、逆位相といったものがある。これらの欠陥は、いずれも半導体の特性を劣化させる要因となる。イオン注入では、加速されたイオンと半導体構成原子との衝突のため点欠陥が発生する。半導体に本来の特性を持たせるためには、このような欠陥を除去することが必要不可欠である。

結晶ポテンシャル (crystal potential)

結晶原子が電子に与えるクーロンポテンシャル(Coulomb potential)をいう。一般には、個々の原子の与えるポテンシャルの総和として与えられる。結晶ポテンシャルをフーリエ展開したときの、第ゼロ次のフーリエ係数を、特に平均内部ポテンシャルという。マイナス電荷を持つ電子に対しては負値となり、プラス電荷を持つ陽電子に対しては正値となる。

【こ】

高温イオン注入 (hot implantation)

半導体へ局所的に不純物を導入する方法としては、イオン注入法や熱拡散法がある。イオン注入は加速した任意のイオンを直接半導体に導入する方法であり、熱拡散係数や固溶度によらず非熱平衡状態で半導体に不純物を添加できる利点を有する。イオン注入では不純物の導入と同時に結晶欠陥も導入されるという問題がある。結晶欠陥は伝導に寄与する電子や正孔などのキャリアを散乱・捕獲することで電気特性に悪影響を与えるので、イオン注入後は熱処理を行い、このような欠陥を除去して結晶性を回復させる必要がある。SiCでは室温でのイオン注入により発生する高濃度の欠陥が熱処理後も残留し、結晶性が回復しない。これに対して、試料を加熱しながらイオン注入を行う「高温イオン注入法」を用いると、注入中にも欠陥が除去できるので欠陥の蓄積が抑えられ、注入後の熱処理により結晶性を十分回復させることが可能となる。

高周波加速 (RF acceleration)

荷電粒子を高エネルギーまで加速する場合、静電場による加速では加速電極の絶縁破壊などの問題から加速エネルギーに上限が存在する。そこで、荷電粒子を高周波電場の中に投入し、波乗りのように連続的に加速電場に置くことにより高エネルギーまで加速する手法がとられる。

【さ】

サイクロトロン (cyclotron)

荷電粒子が磁場の中で回転する時、その周期が粒子の速度に関係せず一定であることを利用して周期的に加速するのがサイクロトロンの基本原理である。従来の普通型サイクロトロンでは、相対論的効果による加速粒子の質量の増加などのために、イオンビームを集束しながら高エネルギーに加速するには限界があった。これを改良した、小型で比較的高いエネルギーと大電流が得られるタイプがAVF(Azimuthally Varying Field)サイクロトロンであり、軌道方向での磁場を周期的に変化させてビーム収束を高めると共に、相対論的効果を打ち消して高周波電場との共鳴条件を保つ方式をとっている。陽子については、数MeV~100MeVのエネルギーで加速が可能である。

サポートガス (support gas)

ECRイオン源で、プラズマ中の多価イオンの生成量を増加するために、目的とする元素の試料ガスと混合して導入する軽いガス。

三酢酸セルロース線量計(CTA dosimeter)

電子線、γ線照射における数10kGy領域の大線量を測定する場合に用いる線量計。三酢酸セルロース(CTA:Cellulose Tri-Acetate)にトリフェニルホスフェートを添加してフィルム状にしたもので、放射線の照射により近紫外光の吸収率が増加することを利用し、線量計として用いている。

【し】

G値 (G-value)

放射線化学において反応生成物の収率を表すものとして、物質が吸収したエネルギー100eVあたりの化学変化した原子・分子の数をG値という。

時間分解X線吸収分光 (time-resolved X-ray absoption)

物質にX線を照射すると、内殻電子の励起・電離に伴い、物質構成原子に特有の吸収を生じる(光電吸収)。その極大(低エネルギー側の端に現れるので吸収端と呼ぶ)の近傍で、吸収端から約30eV高エネルギー側までの低いエネルギー領域の吸収曲線に現れる微細構造は、X線吸収端構造(XANES)と呼ばれている。この微細構造から、液体や非晶性物質中の吸収原子の周りの原子配列や原子価の違いなどの情報を得ることができる。一方、吸収端より30eV高エネルギー側からさらに1keV程度までの範囲には、広域X線吸収微細構造(EXAFS)と呼ばれる構造が現れる。この構造から、吸収原子の周りの他の原子の位置や数の情報を得ることができる。吸収されるX線が短時間のパルス状であると、現象を短い時制に分解して観測することができるため、物質にエネルギービームを照射した時に引き起こされる構造変化の過程を時間的に明らかにしたり、物質を形成しながらその過程を「その場(in-Situ)」解析し、新物質・材料の創製に用いたりすることができる。

しきいLETと飽和反転断面積 (threshold LET, saturated cross section)

半導体メモリー素子へ重イオンを照射すると、メモリー内容の反転が起こる。このようなメモリー反転は入射イオンのLETがあるしきい値以上になると発生し始め、ある程度大きくなると反転確率はほぼ一定となる。このメモリー反転が発生し始めるLETをしきいLET、ほぼ一定値に達した時の反転確率を飽和反転断面積という。

質量衝突阻止能 (mass collision stopping power)

ある運動エネルギーを持つ荷電粒子が、物質中を進む時に飛跡に沿って単位長さ当たりに失うエネルギー量を阻止能、これを媒質の密度で割ったものを質量阻止能(Mass Stopping Power)といい、衝突及び制動放射に起因する衝突阻止能及び放射阻止能に分けられる。阻止能とは全エネルギー損失を指すが、線エネルギー付与(LET)は「エネルギーを限定した線衝突阻止能である。例えば、L100は100eVに限定された線エネルギー付与であり、L∞が線衝突阻止能を表わす。

照射線量 (exposure dose)

X線及びγ線の照射量を、空気を電離する能力で評価することがあり、これを照射線量という。国際単位(SI単位)では、空気1kgあたりに生ずる電荷をクーロン単位で表す(C・kg-1)。従来は、標準状態の空気1cm3当たりに生ずる電荷を静電単位で表したレントゲン(1R=2.58×10-4C・kg-1)が使用されていた。

焼成 (firing)

セラミックの出発物質となるケイ素系高分子を不活性ガス中で1000℃以上に加熱して熱分解することにより、セラミックスへ転換する処理のこと。

除去修復 (excision repair)

DNA損傷の修復機構の一つ。切除修復ともいう。2本鎖DNAのどちらか一方のDNAに損傷が生じた場合、損傷部位の前後でDNA鎖を切断して除去する。その後、損傷を受けていない方のDNAを鋳型として切り出された部分のDNAを合成し、DNA鎖の切断部分を再結合してギャップを埋め戻す、一連の酵素反応からなる。

シングルイベント効果 (single-event effect: SEE)

半導体素子の放射線照射効果の一つ。高エネルギー重イオンが半導体素子に入射すると、大量の電子-正孔(電子の抜けた孔、粒子性を有する)対が発生し、この電荷によって瞬時的に電極の電位が変動するために、メモリーが反転する(ソフトエラー)。また、CMOS集積回路(IC)の中に存在する寄生サイリスタ構造の部分に電荷が発生すると、電極間が導通状態になり、外部電源を切るまでICに大電流が流れ続け、ついには焼損することがある(ラッチアップ)。シングルイベント効果は、ICの集積密度の増加によって生じた損傷であり、宇宙用ICで大きな問題になっている。地上では、パッケージ材からのα粒子によって発生し、パッケージ材を高純度にする対策がとられている。

シングルエンド加速器(single-ended accelerator)

イオン源を高電圧端子内に組み込んだ形式の加速器で、タンデム加速器と対比してシングルエンド加速器と呼ばれている。イオンは、高電圧端子とアース間の電位差で加速されるため、得られるビームエネルギーは、高電圧端子の電圧と等しい。イオン源が高電圧端子内に設置されるため、構造が単純であり、イオン種も数種類(軽イオン)であるのが一般的である。タンデム加速器と比較して加速イオン種が少なく、エネルギーも低いが、大強度の軽イオンビームが得られる。

【す】

ストロンチウム (strontium)

アルカリ土類金属元素の一。元素記号Sr原子番号三八。原子量八七・六二。銀白色のやわらかい固体金属。炎色反応は深赤色を呈する。天然には炭酸塩・硫酸塩として産する。

【せ】

制限酵素 (restriction enzyme)

DNAの特定の塩基配列を識別して、その位置で二本鎖を切断する酵素。各種の細菌に含まれ、細菌細胞に侵入するウイルスなどの外来DNAを識別し分解するが、自己のDNAは保護機構により破壊をまぬがれる(これを制限という)。DNAを必要な位置で切断し、塩基配列の解析、組換えDNAの作出など、遺伝子工学に応用されている。
線エネルギー付与 (Linear Energy Transfer)
ある運動エネルギーを持つ荷電粒子が、飛跡に沿って物質中を進む時に単位長さあたりに失うエネルギー。線阻止能の定義の一つであり、「限定された線衝突阻止能」とも呼ばれる。エネルギーを限定しているため、結果として飛跡から一定の距離のパイプ上の区域の中で失われるエネルギー損失を指す。「質量衝突阻止能

前駆体法 (precursor method)

ケイ素を含む高分子(前駆体高分子)を熱処理して無機化することでセラミックを合成する方法。従来の粘土やセラミック粉末を加熱成形する手法と異なり、直径10μmのセラミック連続繊維や複合材料などの合成が可能。原研高崎では、この製造プロセスに放射線照射を応用する。

線形加速器 (linear accelerator)

高周波電場を使って電子・陽電子等の荷電粒子を直線的に加速する装置。リニアック(linac)ともいう。

線量 (dose)

吸収線量」「照射線量

【た】

耐放射線性 (radiation resistance)

放射線により半導体素子が受ける影響には、放射線の総照射量に応じて素子特性が劣化するトータルドーズ効果と、一個の粒子が入射することによって素子に機能障害が生ずるシングルイベント効果がある。トータルドーズ効果は放射線により素子中に発生・蓄積する欠陥に関係しており、電子線・陽子線照射による太陽電池の出力劣化やガンマ線照射によるMOSFETの特性劣化が代表例である。トータルドーズ耐性の向上には素子中での欠陥発生を抑制する必要がある。一方、シングルイベント効果は粒子が入射した際に素子中で瞬間的に発生する過剰の電荷に起因すると考えられており、主に高エネルギー重イオンの入射によって発生する。シングルイベント効果はメモリーの誤動作といったソフトエラーとパワーデバイスの破壊に代表されるハードエラーに分類できる。シングルイベント耐性の向上には素子内で発生する電荷量を低減することが有効である。

炭化ケイ素単結晶 (silicon carbide crystal)

炭素原子とケイ素原子が1対1で結合した化合物である炭化ケイ素(SiC)単結晶は天然には存在しないが、歴史的にはガリウム砒素(GaAs)単結晶と並び最も古くから知られた化合物半導体のひとつである。元来、SiCはカーボランダムで知られているように研磨材として使われてきたが、1970年代の終り頃から高い温度や強い電離放射線場などの過酷な環境で使用できる耐環境性半導体素子の素材として注目されるようになった。SiC単結晶の結晶構造は多様で、現在報告されているもだけでも190種類を越える。またSiCは化学的に極めて安定であり、シリコンと同等以上の良好な電気特性を有するばかりでなく、結晶表面の熱酸化により絶縁膜が形成できるため、集積回路を作る上でも有利である。

タンデム加速器 (tandem accelerator)

タンデムとは縦並びの2頭立ての馬車の意味で、2段の加速機構をもつ静電加速器をタンデム加速器という。通常、正の高電圧電極の左右に2本の加速管がベース(アース電位の基盤)に向かって取り付けられる。まず、ベース側で負イオンを発生させ、それを高電圧極に向かって加速し、電極内で正イオンに変換して、再びベースに向かって加速する。多種類の重イオンの加速には数種類のイオン源を切り換えて使用する必要があるので、イオン源がベース側にあるタンデム加速器が有利である。高崎量子応用研究所に設置したものは、加速電圧が3MVであり、0.8~6MeVの陽子と0.8~18MeVの重イオンを発生することができる。

【ち】

チタン (titanium)
チタン族に属する遷移元素の一。元素記号Ti原子番号二二。原子量四七・八八。銀灰色の鋼に似た固体金属。軽くて強度があり、耐食性も強い。タービン翼や飛行機の機体の材料などに利用される。工業材料として重要。チタニウム。

チャネリング (channeling)

荷電粒子が、規則的に原子が配列した物質の結晶軸に沿って入射する時、衝突を受けないで物質中の深部まで到達する異常透過現象。この現象を利用したビーム分析を行うことにより、10-3nmの精度で、直視的に原子の変位を検出できる。

中空糸 (hollow fiber)

芯が中空になっている糸。初め外径100~150マイクロm、膜厚50マイクロm程度のものが保温性や帯電防止性に優れた衣料用繊維として開発された。広い膜面積を持つコンパクトにまとめることができるので、分離用の膜として広く使われるようになった。種々の内外系を持つ中空糸膜が酢酸セルロース、ポリアミド、ポリスルホンなどを素材として凝固浴を用いる紡糸法により作られる。

中空糸モジュール (hollow fiber module)

多数の中空糸を束ねたもの。透析、限外濾過、逆浸透などに使われている。
中性子過剰核、中性子欠損核 (neuton-rich nuclei, neutron-deficient nuclei)
各元素の安定なアイソトープの原子核に比べて、中性子の多い核を中性子過剰核、中性子の少ない核を中性子欠損核という。どちらも、その存在には一定の限界がある。原子核は中性子が極端に多く(少なく)なると、中性子(陽子)を放出してしまう。

【て】

DNAライブラリー(DNA library)

プラスミドやファージなどのベクターに、目的とする生物種のDNA断片をランダムに挿入したものを集め、大腸菌などの適切な宿主内にクローン化したもの。十分に多数のクローンを収集すれば、その集団の中の少なくとも一つのクローンが目的とする遺伝子やDNA断片を含んでいると確率的に期待される。ゲノムライブラリーともいう。

デバイ温度 (Debye temparture)

固体の比熱をデバイの比熱式によって記述する場合に導入される固体の特性温度のことで、格子振動の最大の振動数とプランク定数の積とボルツマン定数の比で定義される。一般に、バルクと表面で異なる値をとる。

転位線、転位ループ及び転位網 (dislocatione line, dislocation loop and dislocation network)

原子が規則正しく並んでいる結晶中で、原子位置の乱れが線状に連なったものを転位線という。また、この転位線が環状に閉じたものを転位ループ、多数の転位線が絡み合ったものを転位網と呼ぶ。材料中での原子のはじき出しによって、結晶格子点(規則正しい原子位置)以外の位置にある原子(格子間原子)や、原子の無い格子点(原子空孔)が生成し、これらがそれぞれの集合体を形成することにより転位が生じる。例えば格子間原子が集まると余分な原子面が形成され、その境界が転位ループとなる。

電気的活性化(electrical activation)

半導体の格子位置を構成原子とは価電子数の異なる原子(不純物)で置換すると伝導に寄与する電子、正孔と呼ばれるキャリアが生ずる。例えば、SiにV族のPを導入するとPの4個の価電子は隣接する4個のSiとの共有結合に利用され、1個の電子は余剰して伝導電子となる。このように電子が伝導を担っている場合をn型半導体と呼び、電子を供給している不純物をドナーと呼ぶ。同様にIII族のBを導入すると、隣接するSiとの共有結合の形成には電子が一個不足するために正の電荷を持つ正孔が生ずる。この場合をp型半導体、不純物をアクセプタと呼ぶ。このように、ドナーやアクセプタ不純物が半導体結晶の格子位置を置換することで電子や正孔などの伝導キャリアを放出することを不純物の電気的活性化という。また、導入した不純物濃度に対する電気的に活性化した不純物濃度の割合を電気的活性化率と呼び、不純物導入の効率を示す指標として用いられる。

電界効果トランジスタ (Metal-Oxide-Semiconductor Field Effect Transistor:MOSFET)

半導体素子のひとつであり、ゲート、ドレイン、ソースから構成されるトランジスタ。ゲートは、金属-酸化膜-半導体(Metal-Oxide-Semiconductor(MOS))の積層構造となっている。ゲートに印加する電圧を変化させることでソースとドレイン間に流れる電流を制御(増幅)するが、ゲートに電圧を印加しない状態でソースとドレイン間に電流が流れるノーマリーオン型と電流が流れないノーマリーオフ型がある。ノーマリーオフ型では、ゲート(金属)に電圧を印加することで酸化膜と半導体の界面に「チャンネル」と呼ばれる電流の流れる道が形成され、ソースとドレイン間に電流が流れるようになる。

【と】

等時性磁場 (isochronous Field)

ある速度を持つ質量m0電荷qのイオンを磁場B0中に入れると、イオンは円運動を行い、その角速度ωはω=qB0/m0で表される。この式のように、イオンの周期運動の周期(ω)が振幅(半径)と無関係に一定である場合、この運動は等時性を持つという。サイクロトロンでは、相対論的効果が無視出来ない高エネルギーまでイオンを加速するので、イオンの回転運動の等時性を保つように半径方向に勾配を持つ磁場を作っており、この磁場を等時性磁場という。

トータルドーズ効果 (total dose effect)

半導体素子の放射線照射効果の一つ。放射線による損傷が蓄積されて、半永久的に特性を劣化させ、ついにはその機能を破壊する現象。絶縁用酸化層内の正電荷発生、酸化層と基板界面の界面準位の発生、基板結晶の欠陥発生などの損傷によって起こる。トータルドーズは、積算線量と訳されている。

トランスポゾン (transposon)

転移性遺伝要素の一つで、ある染色体から他の染色体へと移動する遺伝子単位。細菌、酵母、動・植物などに広く分布している。転移する部位は一定でなく、あらゆる遺伝子に転移する。遺伝子の内部にこれが挿入されると遺伝子の不活性化が起こる。

トリプルビーム照射 (triple beam irradiation)

核融合炉の照射環境の特徴である原子のはじき出し及び核変換ガス原子(水素及びヘリウム)による損傷を模擬するために、3台の加速器で加速した高エネルギーイオンビーム(はじき出しを与えるための重イオン、水素及びヘリウムイオンの3種類)を同時に材料に照射すること。

【ね】

粘弾性 (visco-elasticity)

高分子材料は力学モデル的にバネと粘性体から成っていると考えられる。これに外的な力やエネルギーを与えると、材料のバネと粘性体の存在状態によってエネルギーは種々の減衰状態を表す。これから材料の状態を調べることができる。

【は】

橋かけ (crosslinking)

ゴムの加硫のように、線状の高分子鎖間に化学結合を生じさせることを橋かけという。橋かけの方法として、触媒を加えて加熱する化学法と、放射線を照射する方法がある。放射線法は、固体中で、また低温でもできるという特長がある。橋かけにより網目構造になると分子は動きにくくなり、加熱しても流動性を示さなくなる。架橋ともいう。

バナジウム (vanadium)

バナジウム族に属する遷移元素の一。元素記号V原子番号二三。原子量五〇・九四。灰色の固体金属。存在量はわずかだが地表に広く分布。チタンに似て耐食性が大きく、普通の酸・アルカリとは反応しにくい。バナジウムを鉄に混ぜると機械的強度が増すので高速度鋼の成分として用いられる。バナジン。

半導体メモリー (memory device)

コンピュータ内部で使用される命令やデータを記憶しておく半導体で作られた電子部品。半導体メモリーに書き込まれた命令やデータは、電気信号に変換されて中央処理装置(CPU)に読み込まれ計算処理される。半導体メモリーにはいくつかの種類があり、命令やデータを中央処理装置(CPU)へ読み込ませる機能しかないリードオンリーメモリー(ROM)や、読み込みばかりでなく、、CPUで計算された結果を再び書き込めるダイナミックランダムアクセスメモリー(DRAM)などが良く知られている。これら半導体メモリーは、命令やデータを電荷の有無で記憶する。電離作用のある放射線や高温などの過酷な環境では、この電荷の蓄積量が容易に変動するため、記憶装置としての役割を果さなくなる事が多い。

反粒子 (anti-particle)

電子に対する陽電子、陽子に対する反陽子のように、ある素粒子に対して同じ質量、寿命、スピンを持つが、電荷と磁気モーメントが逆符号である素粒子。

【ひ】

比放射能 (specific activity)

単体又は化合物の単位重量あたりの放射能をいう。Bq・kg-1を単位とする。単体又は化合物に含まれるある元素がその元素のラジオアイソトープ(RI)だけから構成される時、これを無担体(キャリヤーフリー)の状態といい、比放射能は最大である。

【ふ】

ファラデーカップ(Faraday Cup)
荷電粒子を直接電流として計測する計器。金属等で作られた円筒形の一方の口が開けてあり、そこから入った荷電粒子の数を電流又は電荷量として読むために電流計又は電位計をつないで測定する。

フーリエ変換赤外反射吸収法 (FTIR RAS : FTIR Reflection Absorption Spectroscopy)

フーリエ変換を信号処理の手段に利用することにより、検出感度の向上を図った赤外分光法の一つである。入射面に平行な偏光を大きい入射角で金属に入射させると、金属面上の薄膜に対する正反射の感度が著しく向上する。このことを利用した薄膜の赤外スペクトル測定法をいう。

複合材料(composite)

2種類以上の材料から構成される素材の総称であるが、通常、複合材料と言えばガラス繊維あるいは炭素繊維で強化したプラスチックをさす。最近では、セラミック繊維でセラミックを強化した複合材料も研究されているが、これはセラミック複合材料と呼ばれる。

不確かさ(uncertainty)

試料調製処理、測定等の同一手順のくり返しに伴ってランダムに生じる測定値のばらつき(精密度: precision)と、その測定平均値の標準あるいは校正値からのずれ(正確度: accuracy)との相乗和で表される総合的な誤差。一般的に精密度は、統計分布における標準偏差の範囲を、例えば1σであれば68%信頼度というように併記する。

不融化(curing)

セラミックの出発物質となる高分子を橋かけすることで、加熱処理の際に形状が破壊されないようにすること。前駆体法では、高分子をセラミックスに転換する無機化の際に、1000℃以上の温度に加熱する必要があるため、繊維や複合材料などの形状を保持するために重要な工程となる。

プラズマ対向機器(壁材料)(plasma facing components (PFC materials): PFC)

真空容器などをプラズマの熱から保護するためにプラズマに面して置かれる壁(第1壁、ダイバーター、リミター)。

フレンケル欠陥 (Frenkel defect)

正規の結晶格子点に存在する原子を一個取り除いて作られる空格子点(vacancy)と、その原子を格子の隙間に割り込ませて作られる格子間原子(interstitial atom)からなる一対の欠陥のうち、最も単純な形態の欠陥であり、1~3MeV程度のエネルギーをもつ電子線を照射することによって作られる。

分子動力学手法を用いたQMDコード (Quantum Molecular Dynamics: QMD)

QMD (Quantum Molecular Dynamics) コードは、原子核内の核子の振る舞いを量子力学の波動方程式に基づく波束で表し、核子間の相互作用のもとで全部の核子の動きをシミュレーションする計算コード。N体の理論的枠組みなので、二体の核子-核子衝突だけでなく、クラスター生成、多重核破砕反応での質量分布についても情報を得ることができ、重イオン反応を解析する有力な手法となっている。

【へ】

ベクレル (Bq)

放射能を表す国際単位(SI)。放射性核種の壊変数が1秒につき1である時の放射能を1ベクレルという。この名称は、1896年に放射能を発見したA.H.Becquerelに由来する。なお、従来使用してきたキュリー(Ci)との関係は、1Ci=3.7×1010Bqである。
変異頻度 (mutation frequency)
観察した全植物体の中で変異を起こした植物体の割合。(1Gyあたり1遺伝子座に起きた突然変異の割合に換算して示した)

【ほ】

放射線抵抗性菌 (D. radiodurans)

細菌には胞子形成能のある種類と無い種類とがある。一般に、胞子は放射能に対する抵抗性が大きいことが知られている。(この場合でも、水分や温度などが生育に適している条件では、発芽しやすいので、かえって放射線に対する抵抗性は低くなる。)一方、胞子を形成しない種類の細菌は放射能に村する抵抗性が小さい。しかし、これらの中にもまれに胞子形成細菌よりも著しく放射線抵抗性の大きいものがあり、放射線抵抗性菌と呼ばれている。これらは、食品照射や放射線殺菌の研究の過程で発見されたものが多い。また、ラジウム温泉の周辺から探し出された例もある。これらの細菌頬では放射線で損傷を受けたDNAを修復する能力が著しく大きいことが知られている。なお、放射線抵抗性菌で病原性をもっているものは知られていない。

ホウ素 (boron)

ホウ素族元素の一。元素記号B原子番号五。原子量一〇・八一。硼酸・硼砂などとして産出する。黒灰色の金属光沢をもつ固体で代表的な半金属。ダイヤモンドに次いで硬い。硼酸・硼砂などの化合物はガラス材料など用途が広い。

ホール係数 (hall coefficient)

電流Ixの流れている試料に磁場Bzをかけると、両者に垂直な方向に電場Eyが生ずる。Eyは、Ix、Bzに比例し(Ey=R・Ix・Bz)、比例係数Rをホール係数という。ホール係数の値と符号から、試料中の電流を運ぶキャリアの種類(電子又はホール)、及び密度を求めることができる。TIARAの第5ターゲット室の電子線照射電気物性解析装置は、電子線照射による試料のホール係数変化を“その場”測定することができる。

ポジトロン(陽電子)(positron)

ポジトロン(陽電子: 電子の反粒子で正の電荷を持つ)は物質中の電子と対消滅しγ線を放出する。これを利用した分析法は電子状態についての精密な情報を与えてくれるなど、物質の微細な構造を探る精度の高い手段であるため、高温超電導機構の解明や次世代の超LSI開発のための微量な欠陥の分析などの種々の材料研究分野で注目を集めている。またその特異な反応は、原子分子物理、素粒子、宇宙進化、化学反応素過程、突然変異など、さまざまな基礎研究分野の新展開に寄与するものと期待されている。

【ま】

マイクロビーム(microbeam)

加速器などから得られた、イオン、電子あるいはレーザービームを高精度スリットや特殊なレンズを用いてμmあるいはそれ以下のオーダーのスポットサイズに絞ったもの。0.1μmオーダーのビームはサブミクロンビームと呼ばれる。これらは、細胞や材料の微細加工や物質の高分解能な構造解析に有効な手段となる。
マンガン (manganese)
マンガン族に属する遷移元素の一。元素記号Mn原子番号二五。原子量五四・九四。地表に広く分布し、主な鉱石は軟マンガン鉱。動植物にとって不可欠の微量元素。純粋なものは銀白色で、鉄より硬いが、非常にもろい。空気中で速やかに酸化し、被膜をつくる。マンガン鋼などの合金の材料、乾電池・化学薬品に用いる。〔「満俺」とも書く〕

【み】

ミュオン触媒核融合反応 (muon catalyzed fusion reaction : μCF)
混合したトリチウム(T2=t2e2)ガスと重水素(D2=d2e2)ガスに、加速器で生成した負のミュオン(μ、電荷:-e、質量:電子の207倍:105.66MeV、平均寿命:2.2×10-6s)を入射した場合を例に解説する。入射したμは、まずdやtとミュオン原子(dμ又はtμ)を形成し、dμのμはより安定なtμへと移行する。tμは重水素原子deと結合して中間子分子(dtμe)を形成し、この分子中ではdとtとの核間距離が極めて小さいために核融合反応を引き起こす。核融合反応の結果、4Heと中性子が放出され、μが遊離される。μは消滅するまでくり返し核融合反応を引き起こすので、触媒的な役割をはたす。

【も】

モノマー (monomer)

単量体ともいう。高分子の構造単位の原型となる低分子化合物であり、重合反応により高分子を形成する重合性化合物の総称。モノマーは(1)エチレン、スチレンなど、重付加反応で高分子となるもの、(2)ナイロンの原料であるジカルボン酸とジアミンのように重縮合反応で高分子となるものに分類できる。放射線で重合するモノマーは(1)に属する。

モリブテン (molybdenum)

クロム族に属する遷移元素の一。元素記号Mo原子番号四二。原子量九五・九四。銀白色の固体金属。植物の窒素同化に必要であるほか、いくつかの酸化還元酵素の触媒作用に必要であるなど、生体にとって重要。輝水鉛鉱(MoS)から得る。耐酸性が強く、耐熱材料や鋼に加えて特殊鋼製造に用いる。

【よ】

陽電子寿命測定(positron lifetime measurement)

陽電子が発生してから電子と対消滅するまでの時間を計測すること。放射性同位元素 を用いる陽電子寿命測定では、β+崩壊時に放出されるガンマ線と消滅ガンマ線を異な るシンチレーション検出器で検出し、それらの入射時間差を時間-波高変換器により電 気信号に変換することで、ある時間で消滅した陽電子の頻度を計数する。実際には、 このようにして得られた減衰曲線を指数関数などを用いて解析することで陽電子寿命 を決定する。陽電子寿命は、高分子の自由体積や結晶中の原子空孔のサイズと相関を 持つので、寿命測定により自由体積や原子空孔の大きさを評価することができる。

陽電子消滅法(positron annihilation spectroscopy)

陽電子が電子と会合して消滅する際に放出される光子(ガンマ線)を分光することで、陽電子の寿命や消滅相手の電子の運動量分布を知る方法。陽電子消滅法は、物質 内部の原子空孔の検出や電子状態の解析に有用であり、各種の材料物性の研究に利用 されている。従来は、放射性同位元素を用いた陽電子寿命測定、ドップラー拡がり測定及び角相関測定を用いてバルク材料の評価が行われてきたが、最近では陽電子ビー ムを形成することで表面付近の陽電子消滅測定を行うことができるようになっている。

陽電子ビームの静電輸送(electrostatic transport of positron beam)

静電レンズを用いて陽電子ビームを収束させつつ輸送する方式をいう。他に、空芯コ イル内に発生する磁場で陽電子をラーマ運動させ磁力線に沿って螺旋運動させて輸送 する磁場輸送方式がある。陽電子回折のように平行ビームの形成が必要な場合や、磁場の影響を排除したい場合には、磁場輸送よりも静電輸送方式が適している。

陽電子の全反射(total reflection of positron)

陽電子を結晶に入射させた際に、内部に進入することなく表面のみで反射される現象を言う。陽電子に対する結晶ポテンシャルは正となるので、物質内部の陽電子は真空に押し出される傾向にある。陽電子の表面に対する入射角度がある臨界角よりも小さくなると、陽電子の表面垂直方向のエネルギーが結晶ポテンシャルよりも小さくなるために、全反射現象が起こる。

陽電子ビームのパルス化(pulsing of positron beam)

連続(DC)的な陽電子ビームに対して、高周波電気信号により変調を与えることで、 パルス状のビームを形成することを言う。通常、チョッパーとバンチャーの組み合わ せによって構成される電極と高周波電源を用いてパルス化を行う。高エネルギー電子 ビームにより陽電子を発生させた場合には、電子ビーム自体がパルス化されているの で、陽電子ビームもパルス状になっていることがある。陽電子ビームのパルス化によ り、寿命計測などを行うことができるようになる。

【ら】

ラザフォード後方散乱分析 (Rutherford back scattering spectroscopy: RBS)

MeV領域のエネルギーをもつ入射イオンが、物質を構成する原子と弾性的に後方散乱する現象を利用して、元素分析を行う構造解析の手法。

ラジカル (radical)

通常の化学結合は、2個の電子が一対で安定に存在するが、放射線の照射などにより、1個の電子が外れ不安定な結合が生成する。これをラジカルといい、活性化されているため、化学反応を開始させる種として利用される。
RALS (遠隔操作式後充填法治療装置) (Remote Afterloading System)
がん治療法の一つで、192Ir(約370GBq)、137Csなどの小型高比放射能密封線源を組織、体腔、管状器官のがんや腫瘍部分に入れて治療する。あらかじめ治療対象部に線源誘導管を刺入し、模擬線源を用いて配置の的確性を確認したり、周辺組織への線量評価を行った後、実線源に置き換えるので後充填法という。線源の取り扱いは、コンピュータを用いて遠隔操作で行う。この方法は、高線量率の線源を用い、高精度の線量評価により的確な治療時間が容易に設定できること、医療従事者の放射線被曝が無いなどの特長がある。

【り】

リチウム(lithium)

アルカリ金属元素の一。元素記号Li原子番号三。原子量六・九四一。銀白色の軟らかい固体金属。比重〇・五三四で金属中で最も軽い。炎色反応は深紅色を呈する。原子炉の制御棒、合金などに用いる。

リネン(linen)

亜麻を使った織物。丈夫で吸湿性があり、夏の衣料に適する。リンネルに同じ。

リヒテンベルク図形(Lichtenberg Figure)

電子線やX線等を絶縁物に照射すると電気伝導度によって決定される電界強度の分布により、局所的に電子が蓄積され絶縁破壊が起きる。その際の絶縁物に細かく枝分かれした放電痕跡をリヒテンベルク図形という。透明なアクリル板に電子線加速器で適切な加速電圧と電子流で照射した後、釘等で衝撃を与えると照射量に対応した樹状の模様が現れる。18世紀のドイツの物理学者で ゲオルク・クリストフ・リヒテンベルグ は、誘電体に高電圧を放電させることでこの現象を発見したことが知られている。

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国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 高崎量子応用研究所